雑誌『POSSE vol.2』
ミッチ・ウォルツさんの『オルタナティブ・メディア』(2008年12月19日大月書店より発行)によれば、「社会変革を明確に主張するメディアなどが、オルタナティブ・メディアのごく基礎的な定義」ということとされています。その定義に従えば、「今必要なことは、新しい社会の創造へ向けたプロジェクトを開始すること(雑誌『POSSE』創刊の辞)」という問題意識を持つ『POSSE』は、まさにオルタナティブ・メディアとして私たちの前に登場した雑誌といえるのかも知れません。創刊号は2008年9月7日の発行でしたが、第2号(vol.2)は2008年12月21日発行日ということで、ウォルツさんの『オルタナティブ・メディア』と、ほぼ同時期に発行されたことになります。
2号は二つの特集から構成されていて、特集①は「『蟹工船』ブームの先へ」、特集②は「名ばかり管理職/労働組合」となっています。特集の具体的な内容については、直接本誌にあたって頂きたいと思いますが、2号では『POSSE』が行った「若者の仕事アンケート調査」から浮かび上がった問題がいくつか記述されていて、いろいろと考えさせられる内容になっていました。
「アンケート調査」を行う前提として、「若者の不安定就業や失業者の問題は『フリーター』『ニート』と名指しされることによって、あたかも若者の意識変化の問題であるかのように論じられ」てきたこと。そして、そうした「若者論」への対抗として「現実を暴くことだけではなく、現実にどう切り込むことができるのか、社会の状況に立ち向かうための現状分析を調査の大テーマ」にすえた、という問題意識が提出されています。さらに、06年07年に行われた同種の調査を受けて、「①違法状態の若者を留めおく構造、②周辺的正社員の抽出、③職場の雰囲気と転職志望の関係の実態解明」が、今回の調査では重視されたとのことです。
個々の質問項目に対する結果については、具体的な数字とともに分析がなされていますが、「やりがい」に関する調査では、「『顧客への感情』という要因が際立って多い一方で、賃金の上昇に『やりがい』を見出している労働者はかなり少ない」こと。また、「やりがい」に対する「格差」では、中心的正社員が「スキルの向上という、具体的・実質的でありかつ労働条件の向上につながりやすいものに『やりがい』を見出しているのに対し、周辺的正社員は『夢』という、より抽象的なものに『やりがい』を感じている」ことが明らかにされています。
「アンケート調査」に対する結論部では、こうした「抽象的な『やりがい』という隘路ではなく、具体的な職場の改善に道を開いていくことの必要」が指摘されています。これは創刊号の「労働の思想① アントニオ・ネグリ」で、入江公康さん指摘している「QCサークル」の例とも通じるものがあり、「感情やコミュニケーションまでをも対象とした搾取」へと巻き込まれている現状に対する問題提起にもなっています。
「アンケート調査」結果を分析した次の記事では、本田由紀さんが「POSSE調査の意義と課題」ということで、『POSSE』が行った「路上調査」の意義と「残された課題」について記述しています。そのなかでは、「仕事に『やりがい』や『夢』を見出さなければならないというような、ある種の脅迫観念のようなものの背景」を明らかにすることの必要性についても指摘しています。
2009年1月1日付け中日新聞の一面では、「日本の選択点」として「安全網福祉か雇用か」ということで、「ネットカフェ住民」を話題にした記事が書かれていますが、今の社会が抱える問題の所在を具体的に明らかにするとともに「労働運動のネクストステージを切り開いていく」ことを目指して創刊されたオルタナティブ・メディアとしての『POSSE』に、今後とも期待したいと思います。
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