『イギリス型<豊かさ>の真実』
林信吾(2009)『イギリス型<豊かさ>の真実』講談社現代新書、720円+税。
「英国では医療が無料である」というフレーズから、本書は始まります。しかも、「英国人だけが無償の医療の恩恵に浴して」いるわけでなく、「日系企業の駐在員であれ観光客であれ、医療の面で英国人と差をつけられる」ことはないとのこと。そうした医療制度を支える財源である「消費税」17.5%の意味から、「イギリス型<豊かさ>」についての議論は展開していきます。
第2章は「ゆりかごから墓場まで」ということで、「福祉国家」を目指した英国の歴史が概観されています。「戦後の混乱を乗り切るためには、統制経済を軸とする社会主義政策をとるしかなかった」こと。「医療を国家が管理し、医師をジヴィル・サーバント扱い」にすることが、「英国の伝統的な階級社会の考え方からすれば革命的」なことであったこと。そして、オーウェルが『1984年』を執筆したのが、NHS創設の年にあたる等、興味深い指摘がなされています。
第3章は「低福祉・低負担ニッポン」ということで、経済成長を前提として作られた日本の「国民皆保険制度」の問題点が、いくつか指摘されています。医療技術の発展が、医療費抑制へと向かうのではなく、結果として医療費増大を招いたことも「きちんと見ておく必要がある」とのことで、医療行為の特性が、他の経済行為との比較で、分かりやすく解説されています。また、「見えない社会保障」ということで、英国と日本の社会構造の違いにも言及していますが、「制度」と「社会構造」との関係を具体事例とともに比較した内容は、日本の「制度」を考える新たな視点を与えてくれました。
第4章は「クラウン・ジュエル」、第5章は「ところで、若者は……?」と続きますが、第6章は「長寿社会と福祉国家」ということで、「無償の代償」としての英国の「現実」が、いくつか報告されています。「夜勤の看護師はほとんど全員が外国人の派遣スタッフ」となってしまい、「ここは一体、どこの国?」という状況が、「無料の医療制度があるにも関わらず、民間の入院保険に加入する人」の急増という「現実」を招いていることも指摘されています。
第6章の最後では「消費税」の問題が指摘されていて、税収に占める付加価値税の比率が、英国は22.3%であるのに対し日本は既に22.7%であること、そして日本の消費税率5%が、ヨーロッパ大陸諸国の基準で換算すると、すでに20%を越えているとの試算も指摘されています。本書の帯には「年収が低くても安心して暮らせる『福祉国家』の実情」というコピーが書かれていますが、具体的なデータや事例を示して考える材料を与える本書によって、「<豊かさ>の真実」を考えるきっかけを持つことができる内容になっています。
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コメント
初めまして。子育てはなかなか大変ですね。孫ができるとそれも大変です。つまりずーっと大変。小遣いは増えないですが、お互い健康を確保して頑張りましょう。失礼しました。
投稿: 村上 | 2009年3月16日 (月) 13時27分